こんにちは、切粉ラボ運営者のMakaです。
はめあい公差の決め方を調べていると、はめあい公差表、H7g6とは何か、H7h6公差の用途、すきまばめの選び方、しまりばめの計算方法、中間ばめの使い分けあたりが一気に出てきて、かなり混乱しやすいですよね。
さらに、穴基準と軸基準の違い、JISB0401の解説、IT等級とは何か、はめあいの測定方法、公差累積の計算、Cpkと公差設計、軸受のはめあい選定、射出成形公差、鋳造寸法公差まで絡んでくると、単にH7/g6を選べばいい話ではないと感じるはずです。
この記事では、図面で指定するはめあい公差を、設計、加工、検査、組立、保守までつながる形で整理します。あなたが現場で迷いやすい「結局どれを選ぶの?」という部分を、できるだけ実務に落として解説しますよ。

「迷ったらまずはH7/g6(動く)、H7/h6(止まる)、H7/k6(叩く)の3つから考えましょう」
数値や組み合わせは、あくまで一般的な目安です。正確な情報は公式サイトをご確認ください。安全性や重大不具合に関わる設計では、最終的な判断は専門家にご相談ください。
はめあい公差の決め方の基本
まずは、はめあい公差を決める前に押さえておきたい土台から整理します。ここを飛ばして公差表だけ見ると、図面上は正しそうでも、実際に組んだときにガタ、圧入不足、焼付き、測定トラブルが起きやすくなります。
はめあいは、穴と軸の寸法差だけでなく、目的、荷重、温度、潤滑、加工方法、検査方法まで含めて決めるものです。ここ、かなり大事ですよ。
特に製造業の現場では、設計者が意図したはめあいと、加工者が作れる寸法、検査者が測れる寸法、組立者が感じる硬さがズレることがあります。だからこそ、はめあい公差は「記号を選ぶ作業」ではなく、機能を数値化して、量産で再現できる条件に落とし込む作業として考えるのが基本です。
はめあい公差表の見方

はめあい公差表を見ると、H7、g6、h6、k6、p6のような記号が並んでいます。最初は暗号みたいに見えるかもですが、基本はシンプルです。アルファベットは公差域の位置、数字は公差等級の細かさを表します。たとえばH7のHは穴の公差域、7はIT等級を示します。g6のgは軸の公差域、6は軸側の等級です。
ここで大切なのは、H7やg6を単体で見るのではなく、穴と軸を組み合わせたときに、最小すきま・最大すきま・最小しめしろ・最大しめしろがどうなるかを見ることです。はめあいは、単独部品の寸法ではなく、組み合わせたときの関係で決まります。図面上で穴も軸も公差内に入っていても、組み合わせの端同士が当たると、動きが渋い、入らない、抜ける、ガタが大きいといった問題が起きます。
はめあい公差表は、記号を覚える表ではなく、最小すきま・最大すきま・最小しめしろ・最大しめしろを読むための表です。
現場で使うなら、まず基準寸法を決めます。そこに穴の上の許容差と下の許容差、軸の上の許容差と下の許容差を当てはめます。穴の最小寸法と軸の最大寸法を比べると、最もきつい条件が見えます。穴の最大寸法と軸の最小寸法を比べると、最もゆるい条件が見えます。この両端を見れば、そのはめあいが本当に成立するか判断しやすくなりますよ。
| 項目 | 考え方 | 見るポイント | 現場での注意 |
|---|---|---|---|
| 穴の最小寸法 | 基準寸法+穴の下の許容差 | 軸が入る側の厳しい条件 | 入口バリや真円度不良でさらに厳しくなる |
| 穴の最大寸法 | 基準寸法+穴の上の許容差 | 最大ガタの確認 | 位置決め精度や振動に影響する |
| 軸の最小寸法 | 基準寸法+軸の下の許容差 | すきまが大きくなる条件 | 摩耗後のガタも想定したい |
| 軸の最大寸法 | 基準寸法+軸の上の許容差 | 入らない・圧入が強い条件 | 組立荷重や部品変形に注意する |
たとえば穴が小さく、軸が大きい組み合わせでは、すきまが最も小さくなります。逆に穴が大きく、軸が小さい組み合わせでは、すきまが最も大きくなります。この両端を見て、機能として成立するかを判断します。ここで「最小すきまが0でも大丈夫なのか」「最大すきまが大きくても振動しないのか」「最大しめしろで圧入して部品が割れないのか」を確認します。
はめあい公差表を使うときは、いきなりH7/g6でいいかなと決めるのではなく、まず必要なすきま量やしめしろ量を決めてから、表で近い組み合わせを探すのが安全です。さらに、寸法だけでなく、真円度、円筒度、同軸度、表面粗さ、温度差も一緒に見ます。特に数μm〜十数μmのはめあいでは、測定方法や加工面の状態だけで結果が変わるので、表の数字をそのまま現場結果だと思い込まないことが大事です。
JIS規格に基づくはめあいの詳細は、規格本文で確認するのが一番確実です。規格番号や現行情報を確認する場合は、日本規格協会 JSA GROUP WebdeskでJIS B 0401などを検索できます。
H7g6とは何か

H7/g6は、比較的よく使われるすきまばめ寄りの組み合わせです。穴側がH7、軸側がg6なので、穴基準で考えやすく、軸が穴より少し小さめになる方向のはめあいです。ざっくり言うと、ガタを大きくしすぎず、でも軽く動かしたいときに候補になりやすい組み合わせですね。
H7/g6のポイントは、H7/h6よりも軸側を小さく逃がす方向になることです。H7/h6では最小すきまが0に近づくことがありますが、H7/g6では最小すきまを少し確保しやすくなります。そのため、軽い回転、軽い摺動、ブシュとの組み合わせ、手で組みたい位置決め部などで検討されることがあります。もちろん、実際の採用可否は寸法帯、荷重、速度、潤滑、加工精度によって変わります。
H7/g6は「精密だけど動かしたい」場面で見かけやすい組み合わせです。ただし、潤滑、温度差、面粗さ、真円度が悪いと、表の数字どおりには動きません。
たとえば20mm前後の寸法帯では、H7/g6は最小すきまが確保されやすい組み合わせになります。H7/h6よりも軸側を少し逃がす方向なので、ゼロすきまに近い接触リスクを下げやすいです。ここ、けっこう重要です。設計では「ガタを小さくしたい」と考えがちですが、動かす部品で最小すきまを詰めすぎると、熱膨張や形状誤差で一気に渋くなることがあります。
また、H7/g6を使うときは、相手部品の材質差も見たいところです。鉄と鉄、アルミと鉄、樹脂と金属では、温度が変わったときの膨張量が違います。常温の検査では軽く動くのに、稼働中に熱を持つと渋くなる。逆に冷間では硬いのに、運転後は緩くなる。こういう現象は現場でも普通に起きます。
H7/g6を選びやすい条件
H7/g6を選びやすいのは、常時大きなトルクを伝えるわけではなく、軽い回転や摺動をさせたい場面です。たとえば、ブシュに入る軸、軽く抜き差しするガイド、多少の位置精度を保ちながら動かすシャフトなどです。ただし、高速回転や高荷重では、すきま量だけでなく油膜、発熱、振れ、剛性まで見る必要があります。
| 確認項目 | H7/g6で見たいこと | 注意点 |
|---|---|---|
| 相対運動 | 軽い回転・摺動があるか | 高速や高荷重なら別検討 |
| 潤滑 | 油膜やグリスの逃げがあるか | 潤滑不足では焼付きや摩耗に注意 |
| 温度差 | 運転時の膨張差が許容できるか | 異材質の組み合わせは特に注意 |
| 形状精度 | 真円度・円筒度が十分か | 寸法が合っても片当たりする |
ただし、H7/g6を選んだからといって、必ず滑らかに動くとは限りません。実際には、加工面のむしれ、びびり、測定位置の違い、穴の入口バリ、熱膨張などが効きます。はめあい部で面粗さが気になる場合は、表面粗さの目安とRa・Rzの考え方もあわせて確認しておくと判断しやすいです。
H7/g6は便利な組み合わせですが、万能ではありません。ガタを嫌ってH7/h6に寄せるのか、摺動性を優先してH8/f7やさらにすきま側へ寄せるのかは、機能から逆算して決めるのが正解です。現場で迷ったら、まず「最低限必要なすきま」と「許容できる最大ガタ」を数字で置いてみてください。そこから表を読むと、かなり判断しやすくなりますよ。
H7h6公差の用途

H7/h6は、はめあいの中でもかなり代表的な組み合わせです。穴側がH7、軸側がh6なので、穴基準で扱いやすく、汎用的な滑合や位置合わせで候補になります。設計図面でもよく見るので、とりあえずH7/h6にしたくなる気持ちは分かります。ここ、気になりますよね。
H7/h6の特徴は、条件によっては最小すきまが0に近くなることです。つまり、理屈の上ではガタを抑えやすい一方で、形状誤差や温度差があると、思ったよりきつく感じることがあります。穴の最小値と軸の最大値がぶつかる側では、すきまがほぼない状態になります。さらに穴がわずかに楕円、軸にわずかな曲がり、入口に小さなバリがあると、組立時に渋くなります。

理論上の最小すきまが0になるため、実物ではバリや油膜、形状誤差によって『入らない』リスクが最も高い組み合わせです。
H7/h6は便利な組み合わせですが、「とりあえずH7/h6」にすると危ない場面もあります。常時回転、潤滑膜が必要、温度上昇がある、穴の真円度が不安定という条件では、すきま不足に注意してください。
現場目線で言うと、H7/h6は「組めるし、そこそこ位置も出したい」場面で使いやすいです。たとえば、頻繁には動かないけれど分解はしたい部品、軽い位置合わせをしたい部品、交換性を持たせたい部品などです。ただし、摺動を重視するならH7/g6やH8/f7側を見たほうがいい場合もあります。特に油膜を必要とする回転部や、熱を持つ装置では、H7/h6の最小すきまが心もとないことがあります。
反対に、回り止めや圧入を期待するならH7/h6では弱いことが多いです。H7/h6は、基本的にはしっかり固定してトルクを伝えるためのはめあいではありません。軸と穴が滑らないことを期待するなら、キー、止めねじ、クランプ、ピン、圧入など、別の固定方法や中間ばめ・しまりばめ側の検討が必要です。その場合は、H7/k6、H7/m6、H7/p6などを候補にします。
H7/h6で失敗しやすいパターン
H7/h6でよくあるのは、設計側では軽く動くと思っていたのに、現場では渋い、入りにくい、作業者によって組立感が違うというパターンです。これは寸法公差だけでなく、測定位置、温度、表面粗さ、穴の倒れ、軸の円筒度が影響していることが多いです。特に内径は測定が難しく、入口付近だけ測ってOKでも、奥で細くなっていることがあります。
| 用途 | H7/h6が合いやすい理由 | 注意点 |
|---|---|---|
| 汎用の滑合 | ガタを抑えつつ組立性を確保しやすい | 最小すきま0付近の条件を確認する |
| 交換部品の位置合わせ | 標準化しやすく現場で扱いやすい | 部品ごとのばらつきで組立感が変わる |
| 低速・低荷重の案内部 | 大きなガタを避けやすい | 潤滑と異物混入に注意する |
| 軽い位置決め | 分解性を残しやすい | 回り止めは別手段で考える |
H7/h6を選ぶときは、機能を言葉で止めず、最小すきまと最大すきまで確認してください。「ガタを抑えたい」だけでは足りません。最大ガタがどこまで許されるのか、最小すきまが0でも本当に問題ないのか、温度が上がったときに接触しないのか。このあたりを見ておくと、図面と現場のズレを減らせます。
安全側に考えるなら、動かす部分ではH7/h6を出発点にしつつ、試作で渋さが出るならH7/g6へ寄せる、位置決めを強くしたいならH7/k6へ寄せる、という見方が実務的かなと思います。ただし、数値はあくまで一般的な目安です。重要機能では、社内基準や規格本文、メーカー資料を確認してください。
すきまばめの選び方

すきまばめは、穴の最小寸法より軸の最大寸法が小さくなり、常にすきまができる組み合わせです。回転、摺動、組立性、分解性、温度差の吸収を優先したいときに使います。軸が回る、スライドする、抜き差しする、現場で交換する。このような条件があるなら、まずすきまばめから考えるのが自然です。
すきまばめの選び方で最初に見るのは、相対運動があるかどうかです。相対運動がある部品でしめしろを持たせると、基本的には動きません。無理に動かすと摩耗、焼付き、発熱、かじりが出ます。逆に、動かしたいのにすきまが大きすぎると、ガタ、振動、芯ずれ、騒音が出ます。つまり、すきまばめは「入ればOK」ではなく、必要なすきまの範囲を決めることが大切です。
| 条件 | すきまの考え方 | 候補例 | 確認したいこと |
|---|---|---|---|
| ガタを抑えたい | 小さめのすきま | H7/h6、H7/g6 | 最小すきまで渋くならないか |
| 軽く動かしたい | 一定のすきまを確保 | H7/g6、H8/f7 | 潤滑膜と異物混入の余裕 |
| 熱膨張が大きい | 余裕あるすきま | H8/f7、H8/e7 | 運転温度での寸法変化 |
| 分解頻度が高い | 組立性を優先 | H7/h6、H8/h7 | 現場で工具なしに扱えるか |
すきまばめで失敗しやすいのは、ガタを嫌ってすきまを詰めすぎることです。図面上の寸法だけ見ると成立していても、穴の真円度、軸の円筒度、同軸度、表面粗さが悪いと、動きが渋くなります。特に長い軸を短い穴に入れる場合や、複数の穴を貫通して通す場合は、単純な直径差だけでは判断できません。穴同士の位置ズレや軸のたわみが効きます。
もう一つ大事なのが、潤滑です。潤滑が必要な部分では、最小すきまが小さすぎると油膜が切れやすくなります。摩耗粉や切粉が入り込む環境なら、理想値より少し余裕を見ることもあります。逆に、ガタを嫌う精密案内では、すきまを小さくしたくなりますが、その場合は加工精度と測定精度が一気に厳しくなります。
すきまばめを決める実務手順
すきまばめは、次の順で考えると決めやすいです。まず、その部品が回転するのか、摺動するのか、単に差し込むだけなのかを決めます。次に、必要な最小すきまを見ます。ここでは潤滑膜、熱膨張、形状誤差、異物混入を考えます。その後、許容できる最大すきまを見ます。最大すきまが大きすぎると、ガタや芯ずれが問題になります。最後に、加工工程と検査方法でその範囲を安定して作れるか確認します。
すきまばめの本質は、最小すきまと最大すきまの両方を管理することです。最小だけ見ても、最大だけ見ても、現場ではうまくいきません。
たとえば、手でスッと入れたい部品なら、最小すきまをしっかり確保したいです。軽く叩けば入ればよい部品なら、少し小さめのすきまでも成立するかもしれません。回転する軸なら、速度や発熱を見ます。横荷重がかかる案内部なら、最大すきまによる傾きも見ます。こうした機能条件を整理してから、H7/h6、H7/g6、H8/f7などの候補を比較します。
すきまばめは、一見やさしそうですが、実は奥が深いです。動かしたいからすきまを作る。でも作りすぎるとガタになる。このバランスが設計の腕の見せどころですね。迷ったときは、実機で問題になるのが「渋さ」なのか「ガタ」なのかを先に決めると、選ぶ方向が見えてきますよ。
中間ばめの使い分け

中間ばめは、条件によってすきまになることも、しめしろになることもある組み合わせです。位置決めしたいけれど、完全な永久固定にはしたくない。そんなときに候補になります。すきまばめほど自由に動かしたくない。でも、しまりばめほど強く固定したくない。この中間の感覚が、まさに中間ばめです。
代表的には、ノックピン、リーマボルト、位置決めピン、ギヤやプーリの軽い位置決めなどです。現場では「手で入る」「軽く叩いて入る」「ハンドプレスで入る」くらいの感覚差が、かなり重要になります。同じ中間ばめでも、作業者が手で押して入るのか、銅ハンマーで軽く叩くのか、プレスを使うのかで、保守性や組立品質が変わります。
中間ばめは、位置再現性と分解性のバランスを取るためのはめあいです。強くしすぎると保守で困り、弱すぎると位置が安定しません。
使い分けの感覚としては、js6、k6、m6の順に、しめしろ側へ寄っていくと考えると分かりやすいです。もちろん寸法帯によって具体的な許容差は変わりますが、ざっくりした方向性としてはこの理解で入りやすいです。軽い位置決めならjs系やk系、もう少し保持力がほしいならm系を検討する、というように段階をつけて考えます。
中間ばめで一番気をつけたいのは、実際の組み合わせによって組立感が変わることです。すきま側に振れた部品同士ならスッと入り、しめしろ側に振れた部品同士ならかなり硬くなります。つまり、単品寸法は合格でも、組み合わせによって作業性が変わる可能性があります。量産では、穴と軸の加工分布を見て、平均値がどちらへ寄っているかを確認したいところです。
中間ばめを使いやすい部位
中間ばめが向くのは、組立後に位置が安定してほしいけれど、必要になれば分解したい部位です。たとえば、基準プレートのノックピン、治具の位置決め部、ギヤやカップリングの軽い位置合わせなどです。完全なトルク伝達を期待するなら、キーや止めねじ、クランプ、圧入を併用することもあります。
| 使い分け | 組立感の目安 | 向く場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| js系 | 手で入る場合が多い | 軽い位置決め、調整部 | 保持力は大きく期待しない |
| k系 | 軽く叩く・押す感覚 | ノックピン、リーマ部 | 分解頻度を確認する |
| m系 | やや強めの組立 | 位置再現性を重視する部位 | 抜き取り時の傷や変形に注意 |
中間ばめでは、測定誤差や加工ばらつきの影響が大きく出ます。数μm〜十数μmの世界で合否が変わるので、加工機の状態、測定器、温度、作業者の測り方まで含めて管理したいところです。特に穴径は、測定方向や深さで値が変わりやすいです。入口だけでなく、奥側、中央部、複数方向を確認すると、トラブルの予防になります。
また、中間ばめを指定するときは、保守のことも考えてください。設備の現場交換部品で毎回プレスが必要だと、作業時間もリスクも増えます。反対に、精密位置決めが必要な部品で手でスカスカに入ると、再現性が出ません。中間ばめは、設計意図を図面注記や組立指示に落とすと、現場での解釈違いを減らせますよ。
しまりばめの計算方法

しまりばめは、軸が穴より大きくなり、常にしめしろができる組み合わせです。圧入、焼ばめ、冷しばめ、トルク伝達、回り止め、軸受のクリープ防止などで使います。しまりばめは強そうに見えますが、実はかなり慎重に決める必要があります。きつければ安心、という話ではないんですよね。
しまりばめを決めるときは、単に「きつければよい」ではありません。しめしろが小さすぎると空転やクリープが起きますし、大きすぎると部品が割れたり、変形したり、組立荷重が過大になります。さらに、圧入時に表面の山がつぶれるため、図面上のしめしろがそのまま有効しめしろとして残るわけではありません。ここはかなり見落とされやすいです。
図面上のしめしろが、そのまま有効しめしろになるわけではありません。表面粗さのつぶれ、温度差、荷重による変形を見込む必要があります。
基本的な考え方は、穴の最大寸法と軸の最小寸法を比べて、最小しめしろを確認します。これが、いちばん弱い圧入条件です。ここで保持力が足りなければ、実機で抜け、空転、クリープが起こる可能性があります。さらに、穴の最小寸法と軸の最大寸法を比べて、最大しめしろも確認します。これが、いちばん強い圧入条件です。ここで部品が割れないか、軸が変形しないか、組立荷重が過大にならないかを見ます。
| 確認項目 | 意味 | 不足・過大時のリスク | 実務で見ること |
|---|---|---|---|
| 最小しめしろ | いちばん弱い圧入条件 | 空転、抜け、クリープ | 保持力やトルク伝達を満たすか |
| 最大しめしろ | いちばん強い圧入条件 | 割れ、変形、組立不良 | 圧入力と部品応力を確認する |
| 表面粗さの影響 | 山がつぶれて実効値が減る | 圧入保持力の低下 | 研削面か旋削面かを見る |
| 温度差 | 膨張差でしめしろが変わる | 運転時の緩みや過大応力 | 常温検査と稼働温度を分ける |
圧入部で回転荷重や振動がある場合は、H7/p6、H7/r6、H7/s6のような強めの候補を検討することがあります。ただし、材質、肉厚、熱処理、面粗さ、圧入長さで結果は変わるため、一般論だけで決めるのは危険です。薄肉のハブに大きなしめしろを入れると、穴が広がったり、割れたり、相手部品まで変形したりします。硬い材質同士ではかじりも注意です。
しまりばめで見るべき計算の順番
しまりばめでは、まず必要な保持力や伝達トルクを整理します。次に、最小しめしろでその機能を満たせるかを見ます。そのうえで、最大しめしろ時の応力や圧入力が許容範囲かを見ます。さらに、表面粗さによる有効しめしろの低下、運転時の温度差、荷重による変形を加味します。最後に、組立方法を決めます。常温圧入でいけるのか、焼ばめや冷しばめが必要なのか、治具やプレス能力は足りるのか、ここまで見て初めて実用的なしまりばめになります。
圧入を安全に成立させるには、寸法だけでなく、圧入長さ、面取り、潤滑の有無、圧入速度、治具の芯出しも効きます。現場では、入口の面取り不足だけでかじることもあります。
軸受まわりでは、軌道輪にかかる荷重が回転荷重なのか静止荷重なのかで考え方が変わります。回転荷重を受ける軌道輪は、相対すべりを防ぐためにしまりばめが必要になることがあります。一方、分解性や熱膨張を考えて、別側はすきまばめにすることもあります。軸受のはめあいは損傷や安全に関わるため、必ずメーカー資料や設計基準を確認してください。

現場目線であれば、「ベアリングの箱に入っている取扱説明書やカタログの『推奨はめあい表』を見るのが鉄則」です!!
しまりばめは、強くすれば安心というより、必要な強さを過不足なく作る設計です。抜けないこと、割れないこと、組めること、分解するなら分解できること。この全部を満たす必要があります。特に量産品では、最大しめしろ品が連続したときの組立負荷も見ておくと、現場トラブルをかなり減らせますよ。
はめあい公差の決め方と量産管理

ここからは、設計したはめあい公差を、実際の加工と検査でどう成立させるかを見ていきます。図面でH7/g6やH7/p6と書いて終わりではなく、その公差を作れる工程、測れる方法、量産で維持できる管理が必要です。
現場で本当に効くのは、設計値と実加工のばらつき、そして測定の不確かさまで含めて判断することです。ここを押さえると、不良の先回りがしやすくなります。
はめあい公差は、設計者だけのものではありません。加工者にとっては加工難易度、検査者にとっては測定方法、組立者にとっては作業性、保全担当者にとっては分解性に直結します。つまり、量産管理まで考えて初めて、使える公差になるわけです。
穴基準と軸基準の違い
はめあいには、穴基準方式と軸基準方式があります。一般的な機械設計では、穴基準方式を使うことが多いです。理由は、穴加工の工具やゲージを標準化しやすいからです。リーマ、ボーリングバー、プラグゲージなどは、穴側を標準化すると管理しやすくなります。
穴基準では、穴をHにして、軸側の公差域を変えることで、すきまばめ、中間ばめ、しまりばめを作ります。たとえばH7/h6、H7/g6、H7/k6、H7/p6のような考え方です。穴側の加工基準をそろえておき、軸の仕上げ寸法を変えることで、求めるはめあいに調整します。製造現場では、この考え方のほうが工具管理や検査管理を組みやすいことが多いです。
穴基準は、リーマ、ボーリング、ゲージなどの管理を統一しやすいので、量産や部品標準化と相性がいいです。
一方、軸基準方式は、軸側をhなどで基準にして、穴側を変える考え方です。既製シャフトを使う、軸径を変えにくい、複数の穴部品を同じ軸に組むといった条件では、軸基準が便利な場面もあります。たとえば、市販の研磨シャフトをそのまま使いたい場合、軸寸法を変えるより、相手穴側を調整したほうが現実的です。
どちらが正しいというより、加工しやすさ、測定しやすさ、交換部品の標準化、コストを見て選びます。現場では、図面を描く人だけでなく、加工側と検査側にも確認しておくと手戻りが減ります。設計上は穴基準がきれいでも、実際の工程では軸基準のほうが安く安定するケースもあります。逆もあります。
穴基準と軸基準の選定ポイント
穴基準を選びやすいのは、部品点数が多く、穴加工工具やゲージを標準化したいときです。軸基準を選びやすいのは、軸が購入品や標準部品で、相手穴を加工して合わせるほうが楽なときです。設計では「どちらが一般的か」だけでなく、「どちらがその工場で安定して作れるか」を見ると、実務に強い判断になります。
| 方式 | 基準にする側 | 向いている場面 | 現場メリット |
|---|---|---|---|
| 穴基準 | 穴をHで標準化 | 一般機械、量産部品、治具部品 | 工具やプラグゲージを標準化しやすい |
| 軸基準 | 軸をhで標準化 | 市販シャフト、長尺軸、標準軸を使う設計 | 軸を購入品のまま使いやすい |
注意したいのは、穴基準と軸基準を混在させると、図面の意図が読みにくくなることです。装置全体で設計ルールがあるなら、それに合わせたほうがトラブルは減ります。例外的に軸基準を使う場合は、なぜそうしたのかが伝わるように、部品表や図面注記、設計標準に残しておくと親切です。
最終的には、コスト、納期、加工設備、検査設備、交換性のバランスです。はめあい公差は机上の寸法だけではなく、部品をどう作り、どう測り、どう交換するかまで含めて選ぶものです。穴基準か軸基準かで迷ったら、まず標準工具と標準ゲージを使える側を優先すると、量産では安定しやすいかなと思います。
JISB0401の解説
はめあい公差を考えるうえで中心になるのが、JISB0401です。大きく見ると、はめあいの考え方や用語を整理する部分と、穴や軸の許容差表を扱う部分があります。設計図面でH7/g6、H7/h6、H7/p6のような指定をするときは、この公差方式の考え方を前提にしているわけです。
ただ、ここで注意したいのは、現行の考え方では寸法公差だけで機能を完全に保証できるとは限らないという点です。穴径と軸径が公差内でも、真円度が悪い、円筒度が悪い、同軸度がズレている、面粗さが荒いと、組んだ後の動きは変わります。つまり、直径の上限・下限だけを守っても、はめあい機能まで必ず守れるとは言い切れません。
はめあい公差は、寸法公差、幾何公差、表面性状をセットで見ると実務に強くなります。
たとえば、穴径は公差内でも、穴が楕円気味なら軸はスムーズに回りません。軸径が公差内でも、円筒度が悪ければ一部だけ強く当たります。穴と軸の中心がズレていると、回転時に振れや偏摩耗が出ます。こういう不具合は、寸法表だけ見ていると見落としやすいです。
はめあい部では、必要に応じて真円度、円筒度、同軸度、位置度、面粗さなどを追加します。特に回転部、摺動部、シール部、軸受部では、寸法公差だけで済ませないほうが安全です。たとえば、低速で軽く回るだけの軸なら直径公差中心でも成立するかもしれませんが、高速回転やシール性が必要な部分では、形状と表面の管理が効いてきます。
寸法公差だけでは足りない理由
寸法公差は、基本的には測ったサイズが範囲内にあるかを示します。しかし、部品の形状がどれだけ丸いか、どれだけまっすぐか、中心がどれだけ合っているかまでは、直径寸法だけでは十分に表せません。たとえば、2点測定で直径がOKでも、実際には三角形のような丸み形状になっていることもあります。この場合、測定値は合格でも、軸を通すと引っかかることがあります。
| 管理項目 | 何を防ぐか | 指定を検討したい部位 |
|---|---|---|
| 真円度 | 楕円や多角形状による引っかかり | 回転軸、ブシュ、シール部 |
| 円筒度 | テーパや胴膨れによる片当たり | 長いはめあい面、圧入面 |
| 同軸度 | 回転振れや偏摩耗 | 軸受座、歯車、プーリ |
| 表面粗さ | 摩擦、摩耗、圧入後のしめしろ低下 | 摺動面、圧入面、密封面 |
ここを押さえると、JISB0401の使い方がかなり実務寄りになります。規格表からH7/g6やH7/p6を選ぶだけでなく、その部品に必要な形状精度と表面性状まで決める。これが、現場で使えるはめあい公差の決め方です。
もちろん、すべてのはめあい部に厳しい幾何公差を入れる必要はありません。重要なのは、機能上必要な場所にだけ入れることです。何でも厳しくすると、加工費と検査費が上がるだけで、品質改善につながらないこともあります。機能、リスク、量産性を見て、必要な指定を選ぶのが大切です。
IT等級とは何か
IT等級とは、寸法公差の幅を示す等級です。数字が小さいほど公差幅が狭く、精密になります。たとえばIT6はIT7より厳しく、IT7はIT8より厳しい、という関係です。はめあい公差では、H7やg6の数字部分がこの公差等級にあたります。
一般的なはめあいでは、IT5〜IT10あたりがよく登場します。軸側はIT6、穴側はIT7のように、加工のしやすさや機能に合わせて組み合わせることが多いです。なぜ穴側の数字が軸側より大きいことがあるかというと、穴の高精度加工は軸より難しくなりやすいからです。外径は旋削や研削で測定もしやすいですが、内径は工具たわみ、切粉詰まり、測定の難しさが出やすいです。
| 等級の感覚 | ざっくりした使いどころ | 注意点 | 工程イメージ |
|---|---|---|---|
| IT5〜IT6 | 高精度な軸・研削面など | 加工・測定コストが上がりやすい | 研削、精密仕上げ |
| IT7〜IT8 | 一般的なはめあい部 | 加工法と検査法の確認が必要 | 精密切削、リーマ、ボーリング |
| IT9〜IT10 | やや余裕のある機械部品 | ガタや位置精度の確認が必要 | 一般切削 |
| IT11以上 | 非はめあい部や一般寸法 | 機能寸法には不向きな場合がある | 一般公差領域 |
ここでよくある失敗が、なんでも厳しいIT等級にしてしまうことです。精度を上げれば品質が上がると思いがちですが、必要以上に厳しい公差は加工時間、工具摩耗、測定工数、歩留まりに効いてきます。しかも、工程能力が足りないのに厳しい公差だけ指定すると、不良率が増えてコストが跳ね上がります。
たとえば、IT6相当の外径を安定して作るには、機械の剛性、工具摩耗、温度変化、測定方法まで整える必要があります。内径のIT7でも、穴が深い、材質が粘い、工具が逃げる、切粉が詰まると安定しにくくなります。図面では一行で書ける公差でも、現場では加工条件と検査条件がセットで必要になります。
IT等級を決めるときの考え方
IT等級は、まず機能から決めます。ガタをどこまで許せるか、しめしろをどこまで管理したいか、相手部品との互換性が必要か、分解交換があるか。このあたりを整理します。その次に、加工工程で安定して出せるかを見ます。最後に、測定器で正しく判定できるかを確認します。機能、加工、検査の3つがそろって初めて、そのIT等級は意味を持ちます。
IT等級を厳しくすると、品質が自動的に上がるわけではありません。工程能力が足りない状態で厳公差にすると、手直し、選別、再検査が増えて、かえって現場が不安定になることがあります。
切削で十分なのか、研削が必要なのかも重要です。はめあい面の精度や表面粗さを詰める必要がある場合は、研削加工の利点と切削加工との違いを確認すると、工程選定の考え方がつかみやすいです。
IT等級は、設計者にとっては便利な記号ですが、加工者にとっては作り込みの難易度そのものです。だからこそ、重要部位だけ厳しくし、非重要部位は普通公差や緩い公差に任せるメリハリが大切です。すべてを精密にするより、機能に効くところだけを精密にする。この考え方が、品質とコストのバランスを取りやすいですよ。
はめあいの測定方法

はめあい公差は、決めるだけでなく測れなければ意味がありません。穴と軸の測定では、目的に応じて測定器を使い分けます。ここで大切なのは、測定器の名前を覚えることではなく、合否判定をしたいのか、数値管理をしたいのか、原因解析をしたいのかを分けることです。
量産の合否判定なら、GO/NO-GOゲージが有効です。穴ならプラグゲージ、軸ならリングゲージやスナップゲージを使うことで、作業者差を減らしやすくなります。GO側が通り、NO-GO側が通らないことを確認するので、判断が速く、量産向きです。ただし、数値がいくつかまでは分かりません。工程が上限側へ寄っているのか、下限側へ寄っているのかを見たい場合は、数値測定が必要です。
| 対象 | 主な測定方法 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 穴の合否 | プラグゲージ | 量産のOK/NG判定 | ゲージ摩耗と清掃が重要 |
| 軸の合否 | リングゲージ・スナップゲージ | 外径の量産判定 | 測定力や当て方に注意 |
| 穴径の数値管理 | シリンダーゲージ・内側マイクロ | 工程能力や傾向管理 | ゼロ点合わせと最狭点探しが必要 |
| 形状や位置 | 三次元測定機・真円度測定機 | 幾何公差や原因解析 | 測定戦略で結果が変わる |
穴径を数値で追うなら、シリンダーゲージの扱いがかなり重要です。ゼロ点合わせ、最狭点の探し方、深さ方向の測定位置がブレると、同じ穴でも違う値になります。内径測定で迷う場合は、シリンダーゲージの読み方とゼロ点合わせも参考にしてください。
また、測定値が公差の境界に近い場合は、測定不確かさも無視できません。10μm前後の厳しいはめあいでは、測定器の分解能だけでなく、温度、保持、測定力、作業者差も見ておく必要があります。測定室では合格でも、現場の温度で測ると値が違うこともあります。金属は温度で伸び縮みするので、精密寸法ほど温度管理が効いてきます。
量産検査と初品検査は分けて考える
初品では、寸法だけでなく、真円度、円筒度、同軸度、面粗さ、組立感まで確認したいです。一方で、量産中に毎回すべてを詳細測定するのは現実的ではありません。そこで、量産ではGO/NO-GOゲージや自動測定を使い、定期的に数値測定や形状測定で工程の傾向を確認する、という組み合わせが実務的です。
はめあい部の測定は、合否判定と工程管理を分けると整理しやすいです。ゲージで速く判定し、数値測定で工程のズレを追うのが基本です。
検査で注意したいのは、測定器の精度だけではありません。ワークの温度、油膜、切粉、バリ、測定面の傷、測定者の力加減も結果に影響します。特に穴の測定では、わずかな傾きや測定位置の違いで数μm変わることがあります。だから、測定手順書には、測定位置、測定方向、測定回数、温度条件、合否判定ルールを明確にしておくと安心です。
重要なはめあいでは、AQL抜取だけに頼らず、初品全数確認、工程内のSPC、重要寸法の全数ゲージ検査などを組み合わせることがあります。どこまで検査するかは、不具合が出たときの影響で決めます。焼付き、脱落、重大な振動、漏れにつながる部位なら、検査も慎重に設計したいところです。
Cpkと公差設計

図面公差を決めるときは、加工工程の実力も一緒に見ます。ここで出てくるのがCpやCpkです。ざっくり言うと、Cpはばらつき幅の余裕、Cpkは平均の偏りまで含めた実力です。はめあい部では、平均値が片側へ寄るだけで、組立不良が一気に増えることがあります。
たとえば軸径が上限側へ寄れば、すきまばめでは渋くなり、しまりばめでは圧入が強くなります。逆に、軸径が下限側へ寄れば、すきまばめではガタが大きくなり、しまりばめでは保持力が不足しやすくなります。つまり、はめあい公差では、ばらつきの幅だけでなく、平均値がどこにあるかが非常に重要です。
Cpkは、図面公差が量産で本当に守れるかを見るための重要な指標です。公差表だけでなく、工程のばらつきも必ず確認しましょう。
考え方としては、工程の標準偏差が大きいほど、必要な公差幅も広くなります。逆に、図面公差を狭くしたいなら、加工機、工具、治具、測定環境を整えて、ばらつきを小さくする必要があります。図面上で厳しい公差を指定するのは簡単ですが、その公差を量産で安定して守るのは別問題です。
たとえば軸径加工のばらつきが大きいのにh6を指定すると、図面としては正しくても量産では不良が増えます。この場合、公差を緩める、加工方法を変える、研削を追加する、工具補正を標準化するなどの対策が必要です。公差を厳しくする前に、工程能力を確認する。この順番が大事です。
Cpkを使った公差設計の見方
Cpは、工程のばらつき幅が公差幅に対してどれくらい余裕があるかを見ます。一方、Cpkは平均値の偏りも見ます。つまり、ばらつきが小さくても、平均値が上限や下限に寄っているとCpkは悪くなります。はめあいではこの偏りがかなり効きます。穴が小さめに寄り、軸が大きめに寄ると、すきまばめでは一気に渋くなります。穴が大きめ、軸が小さめに寄ると、ガタが大きくなります。
| 状態 | 起きやすい問題 | 対策の方向 |
|---|---|---|
| ばらつきが大きい | 公差外れが増える | 加工条件、工具、治具、機械剛性を見直す |
| 平均が上限側 | 軸なら渋い・圧入過大になりやすい | 補正値や刃具交換タイミングを見直す |
| 平均が下限側 | 軸ならガタ・保持力不足になりやすい | 加工狙い値を中央へ戻す |
| 測定ばらつきが大きい | 合否判定が不安定になる | 測定器、測定手順、温度管理を見直す |
公差設計では、設計者が必要な機能から公差を決め、製造側がその公差を安定して作れるかを確認します。もし工程能力が足りないなら、設計変更、公差緩和、加工工程変更、検査強化のどれかを考えます。ここで無理に厳しい公差を通すと、量産後に選別や手直しが増えます。
はめあい公差でCpkを見るときは、穴と軸を別々に見るだけでなく、組み合わせた結果も見たいです。穴が大きめに分布し、軸が小さめに分布しているなら、最大すきまが大きくなりやすいです。逆なら、最小すきま不足や圧入過大が起きやすいです。量産で本当に困るのは、単品寸法の合否より、組んだときの機能不良です。
公差は狭ければ良いのではなく、必要な機能を満たし、工程能力で安定して作れ、検査で正しく判定できる幅にすることが大切です。ここまで見ておくと、設計と現場の会話がかなりスムーズになりますよ。
公差累積の計算
はめあい部だけを単独で見ても、組立全体では成立しないことがあります。複数部品の寸法ばらつきが積み重なり、最終的なすきまや位置がズレるからです。これが公差累積です。単品では全部合格なのに、組み立てたら入らない、芯が出ない、ガタが大きい。こういうトラブルは、公差累積を見落としていると起きやすいです。
公差累積の考え方には、大きく分けてワーストケースとRSSがあります。ワーストケースは、すべての寸法が悪い方向へ振れた場合を足し合わせます。安全側ですが、公差が厳しくなりやすいです。RSSは、ばらつきが統計的に分散する前提で、二乗和平方根で見る方法です。ワーストケースより現実的な余裕を見やすい反面、前提条件を外すと危険です。
| 方法 | 特徴 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ワーストケース | 各公差を単純加算 | 安全最優先、外れを許容しにくい設計 | 公差が厳しくなりコストが上がりやすい |
| RSS | 二乗和平方根で統計的に見る | 量産で工程管理が効く設計 | 正規分布や独立性などの前提が必要 |
RSSは便利ですが、正規分布、中心化、独立性、無作為組立などの前提があります。工程が偏っていたり、部品同士に相関があったりする場合は、都合よくばらつきが打ち消されるとは限りません。たとえば、同じ加工機で作った複数部品が同じ方向にズレる場合、独立したばらつきとは言いにくいです。この状態でRSSだけに頼ると、組立不良を見逃す可能性があります。
はめあい公差を決めるときは、穴と軸だけでなく、周辺部品、治具、締結、熱膨張、組立順序も含めて見てください。ここを見ないと、単品検査は合格なのに、組立で入らない・ガタが出るという厄介な不具合になります。特に、複数の穴を通るシャフト、左右の軸受座、ピンで位置決めするプレート、ギヤ列の芯間距離などは、公差累積が効きやすいです。
公差累積を考える手順
まず、最終的に守りたい機能寸法を決めます。たとえば、軸と穴のすきま、ギヤのバックラッシ、ピン位置のズレ、組立後の高さなどです。次に、その機能寸法に影響する部品寸法を洗い出します。その後、各寸法がどちらへ振れると機能が悪くなるかを整理します。ここまでできると、ワーストケースで見るべきか、RSSで見てもよいか判断しやすくなります。
公差累積は、図面寸法の足し算だけではありません。組立順序、治具の拘束、締付けによる変形、温度差も効くことがあります。重要部位では、試作で実測して検証するのが安全です。
ワーストケースは厳しいですが、外れ品を許容しにくい安全部品や、現場で選別できない部品では有効です。一方、量産で工程が安定していて、ばらつきが管理されており、無作為に組み合わせる部品では、RSSを使うことで過剰な厳公差を避けられる場合があります。ただし、RSSを使うなら、工程データで前提を確認したいですね。
はめあい公差の設計では、単品のH7/g6やH7/h6だけで満足しないことが大事です。その部品が組立の中で何に影響するのか、相手部品の公差と足し合わさったときにどうなるのかを見る。これができると、図面品質がかなり上がりますよ。
はめあい公差の決め方まとめ
はめあい公差の決め方は、最初に機能を決めて、必要なすきまやしめしろへ落とし込み、その後に加工・検査・組立・保守で成立するかを確認する流れが基本です。相対運動があるならすきまばめ、位置決めと分解性を両立したいなら中間ばめ、固定やトルク伝達を重視するならしまりばめを起点に考えると、選定の方向がかなり整理しやすくなります。
大事なのは、H7/g6、H7/h6、H7/p6といった記号を最初に選ばないことです。まず、何を保証したいのかを決めます。軽く回したいのか、ガタを抑えたいのか、圧入で抜けないようにしたいのか、分解できるようにしたいのか。そこから必要な最小すきま、最大すきま、最小しめしろ、最大しめしろを出します。そのうえで、公差表から候補を選びます。
はめあい公差は、H7/g6などの記号を選ぶ作業ではなく、機能を数値に変えて、量産で守れる形に落とし込む作業です。
さらに、寸法公差だけでは不十分な場面もあります。真円度、円筒度、同軸度、位置度、表面粗さ、包絡条件などを必要に応じて追加します。特に、回転部、摺動部、圧入部、軸受部、シール部では、形状と表面状態が機能に直結します。サイズだけ合っているのに動きが悪い、圧入が安定しない、組立後に振れるというトラブルは、ここを見落とすと起きやすいです。
最後に、現場で確認したいチェック項目をまとめます。
実務で迷ったときの判断フロー
迷ったときは、まず相対運動の有無を見ます。動くならすきまばめ、動かさず位置決めしたいなら中間ばめ、固定したいならしまりばめです。次に、荷重、速度、温度、潤滑、分解頻度を見ます。ここで候補がH7/h6なのか、H7/g6なのか、H7/k6なのか、H7/p6なのかが絞れてきます。最後に、加工と検査で成立するかを確認します。工程能力が足りないなら、公差を見直すか、工程を変える必要があります。
| 目的 | 最初に見る候補 | 追加で確認すること |
|---|---|---|
| 軽く動かしたい | すきまばめ | 潤滑、熱膨張、最大ガタ |
| 位置を出して分解したい | 中間ばめ | 組立感、分解頻度、測定ばらつき |
| 固定して抜けを防ぎたい | しまりばめ | 保持力、圧入力、部品応力 |
| 量産で安定させたい | Cpkと測定方法 | 工程分布、ゲージ、判定ルール |
はめあい部は、設計、加工、検査のどこか一つだけで完結しません。図面を書く人、加工する人、測る人、組む人が同じ前提で見られるようにしておくことが、不具合を減らす一番の近道かなと思います。特に、量産品や安全に関わる部品では、図面公差、工程能力、検査方法、組立条件をセットで標準化しておくと、後工程での手戻りが少なくなります。
この記事の数値や組み合わせは、一般的な考え方を整理したものです。正確な情報は公式サイトをご確認ください。安全性、品質保証、法規、重大な設備損傷に関わる判断は、必ず社内基準、規格本文、メーカー資料を確認し、最終的な判断は専門家にご相談ください。

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